7月に参加した太郎吉蔵デザイン会議の内容を報告させていただきます。
太郎吉蔵デザイン会議とは、今年で11回目になります。
様々なパネリストによるディスカッションを近くで聞くことができます。
今年は、7月20日から22日にかけて、ニセコ町のニセコ中央倉庫群という場所で
行われました。
テーマは「観光」です。
キュレーター、パネリストは原研哉さんにはじまる錚々たるメンバーで行われました。
3日間に渡る会議でしたので、数分では全て紹介しきれないので、今回はおもしろいと
思った話を3つピックアップしてご紹介します。
一つ目は観光産業とは何か。です。
はじめに、観光ということばの由来は、「国の光を観る」という意味です。
国の光を観るとはどういうことかというと、光というのは、観光資源となるものだと
私は解釈しました。
観光資源とは、大きく「土地」「人々」「文化」です。
その土地にある自然や町並み、その土地に住む人々、その土地で培われてきた文化が
そのまま観光の資源となります。そこで大切なことは、もともとあるものが資源であり、
それを生かすことです。
つまり、もともとそこにないものを無理して作り出すのではなく、あるものが
すでに魅力的な光であるから、それを大切にしよう。ということです。
現代の観光のトレンドは、「体験思考」「学ぶ思考」「贅沢思考」です。
そして、うまくそれを活用するために大切となる考えが、「わかった気にさせる」のではなく、
「いかに知らないかを知ってもらう」ということです。
わかった気になると、そこで知的欲求が途切れてしまうことが多く、次に繋がりづらいのです。
いかに知らないか知るということは、まだまだ魅力が隠れているのでは?
という気持ちになったり、宝探しをしている気持ちになります。
一回で理解しきるということは、大変難しいので、次に繋がりやすいのです。
二つ目は、割り箸の話です。
日本で作られる割り箸は、木材を製材した際に出るちょっとの端材で作られているのにもかかわらず、
強度が高いということに、外国の方が注目したそうです。
つまり、日本で生活している私たちは当たり前だと思っているような、
だれも注目しないディティールにこそ、日本の光があるのではないでしょうか。
しかし、だれも注目しないようなディティールに気づくことは、一朝一夕で
できるようなものではありません。
様々なことにアンテナを張り、知ろうとする努力が必要です。
様々なことを知ったからこそ、魅力を発見することができるのだと思います。
これは、私たちの仕事についても同じことが言えると思います。
相手のことを知り、その商品がどんなものか知り、その会社がどんな会社なのかを知る。
そうして、だれも気づかないような魅力を見つけ出してあげることが大切なのだと思います。
三つ目は、ゴジラの話です。
最近出たゴジラの映画で、デジタルになったゴジラが出ていました。
なぜ、アナログの味があるゴジラをデジタル化してしまうのか?元のまま
でも十分魅力的じゃないか?という話が出ました。
現代の技術進歩は凄まじいものです。
そして、その技術進歩に合わせることは悪ではなく、むしろデザインにおいては技術進歩に
寄り添ったものがいいものだと言われています。
しかし、例えばお寺でプロジェクションマッピングをするというように、
もとからある魅力を消すような寄り添い方は国の光を消すようなものです。
何をリスペクトし、何を残していくのか、どう組み合わせていくのかを見極めることが肝心です。
3日間を通して、私たちはどれだけ自分の国のことを知っていて、どれほど正しく伝えられるだろうか
という話が度々出ていました。
これは、仕事にも言えることで、どれほど自分の仕事を知っていて、どれほど正しく伝えられているのか。
仕事をする責任という点で、常に頭においておかなければならないなと思いました。
このような貴重な経験をさせていただき、ありがとうございました。