先日、5カ月前から直腸がんの治療を始めていた母親が病院で4ク
ール目の抗癌剤治療が終わり主治医の診察があるということで付き
添ってきました。
結果は、4センチほどあった腫瘍が綺麗に消えており、表面の組織
検査もがん細胞は残っておらず、今のところ他への転移も無いとい
う内容でした。
母も私も驚きと喜びが織り交ざった感情が溢れたのも束の間、先生
は深部にはがん細胞が潜んでいる可能性がある為、手術は予定通り
しますと冷静なトーンで話を進めて行きました。
安易にも手術することは避けられたと思った母と私は数秒前の喜び
から一転、先生に何か突き放された気持ちになりました。
母はすっかり気落ちしてしまい、私は先生にすぐに手術せずしばら
く経過を見ることはできないかと持ち掛けますが、早い方がベター
という返答で、もちろん最終的には手術をするかしないかの判断は
本人にあるものの素人である私たちは返す言葉も見つからず来月に
手術の予定で事務的に診察を終えました。私たちの診察の後も沢山
の患者がロビーで診察を待っており、その光景を見て私たちにとっ
ては主治医ですが、その先生にとってはあくまでも患者の一人なん
だと痛感しました。
その帰り道、自分がもし母の主治医であったら、これまでの辛い治
療の成果を共に喜び、それでも手術の必要性を丁寧に説明してあげ
るのにと思いながら、母を励まし帰りました。
恥ずかしながらこの歳になっても未だに気遣いが足りない自分です
が、せめて相手の心に寄り添える人間であろうと心に決めた出来事
でした。
ちなみに昨日、母に会ったときは「手術ですっかり直して、早くあ
の先生とさよならしたいよ」と全快に前向きになってくれていたの
で少し安心しました。